ホーム  > オンライン書店・本屋  > 本や出版のこと  > ブックオフ株取得、旗振り役は大日本印刷

2009 .06 .07

ブックオフ株取得、旗振り役は大日本印刷

出版業界再編、カギは大日本印刷 書店など次々傘下に(asahi.com)
長引く不況の中、出版業界が激しく動いている。今月中旬、講談社、集英社、小学館の大手3社と大日本印刷グループが発表したブックオフ株の取得は、長く両者が対立してきただけに、業界を驚かせた。筆頭株主となった大日本印刷は今回の提携を主導したほか、主婦の友社や大手書店の丸善、ジュンク堂などを次々に傘下に置いている。今後、新たな再編が生まれる可能性もある。
なかなかに衝撃的だった音羽、一ツ橋とDNPによる事実上のブックオフ取り込み。
この動きの旗振り役となったのはDNPだったとのこと。
今回、出版3社にブックオフ株取得を打診したのは大日本印刷グループだった。大日本印刷は凸版印刷に匹敵する業界最大手で、年間売り上げは約1兆5848億円。これに対し出版物の販売金額は業界全体でも約2兆円だ。
音羽、一ツ橋が直接行動に出るとなるとかなり波風が立っただろうからDNPが間に入るのは妥当だと思ってたけど、旗振り役だったとは。

しかしDNPはもはや単なる印刷業にとどまらないとはいえ、こうして事業規模を数字で見ると圧倒的ですね。出版、取次ぎ、書店を合わせて出版業界ってことだと思いますけど、単体でそれに迫る売り上げ規模ですか。。。

記事ではDNPの一連のグループ取り込みについて、「出版の上流から下流まで押さえたことになる」って書いてますけど物流と金融を押さえてる、いわば中流である取次ぎは含まれてないです。
TRCや丸善の事業規模からすれば買える取次ぎもあるけど(今のところ)手を出していない。DNPは取り次ぎはいらないんですかね。

さておき、講談社のエライひとが率直に語ってますが、やはり今回のブックオフ取り込みの要因は、コミックの実質的な売り上げ確保・利益管理をしたいという思惑があるようです。
講談社の森武文常務は「要請の第一が、コミックを含めて価値を創造する者へのリターン。次の作品が生み出される世界を構築してくださいということ」と話す。ある出版社幹部からは、ブックオフの売値の1~2%程度を作者に還元することを求める声が上がっている。新刊が出たあと一定期間は店頭で売らないでほしいと要望も出そうだ。
音羽、一ツ橋はコミック販売シェアのワンツーですから当然の動機なんでしょうね。

対するDNPは、ブックオフ取り込みを含め一連のグループ小会社化の動機を「我々の原点である出版業界を活性化させたい」であると語っています。まあ一次流通の立場からすれば中古市場という二次流通に流れることで逸失利益が発生している形になるので、そこを管理できれば「活性化」にも繋がるのかも知れませんが。

でもコミックに限らず中古市場から作者への利益還元はともかくも、新刊発売後に一定期間は中古市場で売らないでくれってのはムリでしょう。てかすべきじゃない。それはお客さんが決めることだし、既成事実が出来上がってしまっている今、「不用品の買い取り」は消費行動として存在してしまっている。それを制限するような管理はお客さんの反発を招くだろうし(そんな束縛、自分だったらヤだもの)、お客さんに離反されたらそもそも業界なんて成り立たないでしょう。

ブックオフの件、出版業界の危機感は分かるんだけど、どうも自分たちの保身だけが目に付く。お客さん(読者)が蚊帳の外に置かれた動機のように見えてならない。

ブックオフ以前のDNPの行動は、商品開発や販路開拓など対顧客という創造的なスキームが見えるんだけど、出版社側に読者の便益を考える姿勢がなければ動機はズレてるわけで。そしたら早晩、足並みは崩れるんじゃないかな。

個人的には、DNPは一次流通、二次流通とかも含めた「出版業界の活性化」を目論んでると(期待を込めて)見てます。まあ出版社の全部が全部、自らの保身に走ってるとは思ってないですけどね

そういえばアーカムさんにレスしなきゃな…。

▼関連エントリー
凸版印刷と紀伊国屋書店が業務提携
音羽、一ツ橋、DNPがブックオフの筆頭株主に
主婦の友社、大日本印刷の子会社に
ジュンク堂書店が大日本印刷の子会社に
丸善と図書館流通センターが経営統合
丸善と大日本印刷が資本・業務提携、DNPが丸善の筆頭株主に

« 今月のbk1ギフト券 | ホーム | エヴァケータイ、予約受付日当日に完売 »



この他のエントリー

アーカイブ