動物に人間の食べものを与えてはいけない理由
相場英雄の時事日想:“カワイイ”が自然を殺す、北海道で見た人間の残酷さ(Business Media 誠)「動物にエサをあげないでください」という注意書きはよく見かけるけど、その理由まで深く考えたことはなかった。これはキタキツネに限ったことじゃないですね。
今月初旬、新作漫画の取材のため、私は北海道を自家用車で走り回った。ウマい食べ物や広大な自然を満喫する中、1つだけ強烈な違和感にとらわれた瞬間があった。違和感の根源は、キタキツネ。北海道観光のガイドブックなどでお馴染みの野生動物だが、彼らの姿を通して、私は人間の残酷な一面を垣間みた。
不用意に食べものを与えることで繁殖してしまわないようにする人間側の理由もあるでしょうけど、一方の動物にとっても命に関わる事態になりかねないとのこと。
でもそこは動物園じゃないし、まして動物園でも勝手なエサやりは禁止されてる。
なぜか?
ましてや、食べられるけれど、食べてはいけないものを摂取し続ければ・・・
利口な子狐はエサをもらうため、国道に現れた。停車した私からもエサがもらえるものだと判断していたのだ。全く人間とクルマを恐れる素振りがない。子狐を驚かせぬよう窓を閉め、クルマをゆっくりと発進させた。ルームミラー越しに見ていると、後方から中型の観光バスが見えた。筆者さんの行動はとても冷静です。ぼくが同じ状況だったら、後続のバスの乗客と同じように何か食べものを与えてしまったかも知れない。原野の野生動物がヒトに寄ってくるという時点でおかしいと感じないのは、あまりに人間中心の感覚ですよね。
バスは私と同じように停車した。だが、次の瞬間、数人の観光客が窓からなにかを投げたのが見えた。スナック菓子か、あるいは果物か。判別はできなかったが、子狐は懸命に路面に落ちたエサを追っていた。
でもそこは動物園じゃないし、まして動物園でも勝手なエサやりは禁止されてる。
なぜか?
本来、キタキツネは野鼠などを食べているという。だが人間が食べるスナック菓子は塩分や糖分が強く、キタキツネにとっては下剤に近い刺激の強い食物だとか。人間も下剤を頻繁に摂れば、栄養が吸収できなくて、ついには体を壊します。
「疥癬(かいせん)と言う皮膚病にかかって、毛が抜けてしまうキツネが最近急増中です」
この病気にかかれば、毛が抜け落ち、やせ細ってしまうという。
ましてや、食べられるけれど、食べてはいけないものを摂取し続ければ・・・
全国各地の観光地で、ニホンザルやキツネ、あるいは鹿などに興味本位でエサを与える人は少なくない。だが道ばたに、無警戒で動物たちが現れることは、不自然極まりないことなのだ。人間の不注意なエゴが野生動物を死に至らしめるという、その悲惨な理由をぼくらはきちんと知るべきですね。かわいいと思うなら、殺したくなんてないですから。
キタキツネを目にした瞬間、ほとんどの人がそう感じるはずだ。クルマに寄ってくれば、なにかをあげたいという気持ちにもなるはず。だが、その行動自体が、野生動物をゆっくりと殺す行為であることを改めて感じてほしい。人間の身勝手がいかに自然を蹂躙してしまうのか。理解しておかなきゃです。