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2009 .12 .29

書店のポイントサービスは「本離れ」に歯止めをかけるか

書店ポイントサービス導入が「本離れ」の歯止めとなるか?――アイシェア調べ(japan.internet.com)
書籍離れが言われる昨今、これまではどこの書店で買っても同じ価格だっだが、大手書店で実質割引となるポイント制を導入する書店が登場した。そこでアイシェアは、同社のサービス会員に対し「書店ポイントサービスに関する意識調査」を実施、2009年12月25日、調査結果を発表した。
ネット書店では、もはやあって当然という感のある「ポイントサービス」。けれど専業書店では再販制とかオトナの事情があってなかなか実現していませんでした。
が、ここに来て三省堂書店や紀伊国屋書店が独自のポイントサービスを導入してきています。

そんな折なので興味深い調査です。

本離れの歯止め役?書店ポイントサービス開始 | リサーチのrTYPE[アイシェア]

» 本離れの歯止め役?書店ポイントサービス開始(アイシェア)

調査母群は元記事にあるので置いとくとして、アイシェアのユーザーさんは本を買われる方が多い印象。この辺はパネルによって全然変わってきますね。
書店利用者の1か月の購入量は、「1冊以上5冊未満」が84.1%、「5冊以上10冊未満」が10.7%、「10冊以上」が5.1%。20代の書店利用率は低いが、購入する量は「5冊以上10冊未満」で12.9%、「10冊以上」で8.6%と、他の年代より多い傾向。なお、本を書店で買うことが「ない」人は20.1%だった。
↓ここら辺の“30代以下の1割が、「本は全く読まない」”ってのが感覚的に近い。

» 本の購入に関する調査/ネットリサーチDIMSDRIVEの公開アンケート調査結果【DIMSDRIVE】

なのでアイシェアの調査はかなり良い方向で捉えた方がいいかな。
本を買うことが「ある」人の購入量別でみると、「1冊以上5冊未満」では85.9%、「5冊以上10冊未満」では95.7%、「10冊以上」買う人では100.0%と、多く買う人ほどポイントを利用したいと答えている。
ポイントによって、買ってくれる人はますます購入意欲を高める傾向があるようだけど、客単価の向上だけでは商売として依然厳しい。利益率にはプラスだけどね。やはり購入者数を増やさないと。
書店全体でポイントサービスが普及したら、本の販売数は増えると思うかを聞いたところ、「とても増えると思う」が8.9%、「少し増えると思う」が50.7%で合計59.6%と6割が『増えると思う』と回答。
その意味では、利益を圧迫してポイントを導入しても購入者の裾野が広がるかどうかは微妙。

ポイントが否定されているわけではないので、本業の利益率を改善してポイントコストを捻出するか、ポイントコストの原資を本業以外に求めるしかなさそう。
まあビジョンなき価格競争はレッドオーシャンを招くだけなので、収益構造の変化を伴わないポイント制度の導入は控えた方がいいでしょうね。

やや調査の趣旨から外れるけど、やっぱり購入のハードルを下げるよりも(不要なわけではなく)、

  • 買いたい本を作る(企画・リサーチ)
  • 見つけられるようにする(プロモーション)
  • 買えるようにする(在庫・版保持)

これらをメーカーと一緒になって行っていかないと、そもそもの読者離れに歯止めがかからないんじゃないでしょうか。

で、現状こうしたことをやろうとしても出版点数が多すぎてハンドリングできないわけで。やっぱり返ってくるのは、資金繰り出版から脱して出版点数を減らしましょう、既刊をじっくり売りましょうってことに尽きると思うんですよね。

…もう何年もこの段階で足踏みしてるなあ。どうやったら変化に踏み出せるだろう。

▼参考リンク
クラブ三省堂(三省堂書店)
紀伊國屋ポイントカード(紀伊國屋書店)

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