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2005 .12 .10

『ザ・エージェント』鬼塚 忠・著

「本」における職業としての「エージェント」。聞きなじみのない方も多いのではないでしょうか。

『海峡を渡るバイオリン』、『考具』、『ロベルト・バッジョ自伝』などなど。映画化され、テレビ化され、ベストセラーとなった書籍の数々。

「千本に三本」しかヒットがでないと言われる日本の出版業界にあって、設立わずか3年あまりで10万部を超えるベストセラーを生み出し、事業化した「エージェント」本人が著者となっているのが本書、『ザ・エージェント』です。

ザ・エージェント
鬼塚 忠著
ランダムハウス講談社 (2005.3)
通常2-3日以内に発送します。

著者、鬼塚氏の実績として挙げられているのが、2001年の会社設立から3年あまりで160冊をプロデュース、そこから5万部超を12作、10万部超を4作、テレビ化1作、映画化5作、漫画化2作──。もちろん失敗もあるとのことですが、それを差し引いてもこれは相当な実績です。

欧米では無名の新人作家がエージェントに見出されることにより突如としてベストセラー作家になることも珍しくないそうです。システムとして前世紀から確立されているんですね。最近では『ハリー・ポッター』シリーズのJ・K・ローリングもエージェントに見出され成功した作家の一人です。

鬼塚氏は元々欧米の映画の原作やノベライズ、ビジネス書などを日本の出版社に売り込む企業に勤務していました。「翻訳のエージェント」です。その環境の中、彼は欧米と日本の出版モデルの差異に気がつきます。

欧米では作家(特に無名・新人作家)にとってなくてはならない存在である「エージェント」が日本ではその存在すら知られていないこと。存在はしていてもさしたる役割を持てていないこと。

「翻訳のエージェント」という既存の環境の中にあって、ほんのちょっとの「差」に気がつき、動き始めたことでビジネスチャンスが大きく変わっていきます。
そう、ビジネスモデルが「翻訳のエージェント」から「作家のエージェント」へ大きく舵を切ったのです。

大柄で人の話もろくに聞かず、一方的に話しをするスタイル、夜中であっても構わず電話をかけてくる、自分勝手な九州男児。おおよそ英語を自在に操るスマートなビジネスマン像とはかけ離れている人物像。懇意にしている編集者からもこう形容される鬼塚氏。しかし彼の話しには、熱気があった。ビジョンがあった。そして人を惹きつける魅力があった。

同業との差別化から、いかに抜きん出てビジネスを確立していくか──。
能力だけではなしえない、情熱や思い、人間的魅力とは何か──。

既存の環境に「ちょっとした着眼点とアイデア」を持って、新しいビジネスモデルを作りえることも本書は教えてくれます。「これから」を実現したい人におすすめです。

また、出版業界の「本を出版していくプロセス」についても詳細にガイドしてくれているので、本が生まれるまでの縮図も知ることができます。

インターネットの普及は個人が手軽に情報を発信することを可能にしました。ブームにもなっているブログの書籍化をはじめ、手軽な自費出版サービスなど、「個人発」の情報が多く生み出されている現在、「本」という形で自己表現をしたい人の一助としてもこの本はおすすめです。

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