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2005 .11 .03

『和紙とケータイ』共同通信社編集委員室・編

今回は『和紙とケータイ』という本の読後感を。

みなさんは日本の伝統の技というとどんなものを思い浮かべるでしょうか。
先日取り上げてみた『職業外伝』でも、思いもよらない「職業」が数多く紹介されていて、率直に驚いたんですが、この『和紙とケータイ』で取り上げられている、伝統技術の幅広さ、そしてその技術がいかに現代においても有用で、その伝統技術なしには、現代の先端技術もありえない、という記述に驚かせられます。
でも、考えてみれば「伝統技術」も、その当時では「最新技術」だったんですよね。

いくつか事例をご紹介してみます。

和紙とケータイ
共同通信社編集委員室編
草思社 (2005.4)
通常24時間以内に発送します。

まず、養蚕。かいこの養殖ですね。世界的にも高いレベルにある日本の養蚕技術が、現代では最新の遺伝子技術に使われています。蚕に絹以外の物質、たとえば猫の感染症を治す薬を作りだしているんだそうです。

それと、魔鏡。
魔鏡は見た目は普通の鏡なんですが、光を当てると仏像やマリア像など、表に見えていない像が映し出される特殊な構造を持った鏡です。
この魔鏡が現代では、現代を代表するコンピュータ、そのおおもととなる半導体基盤のわずかなゆがみをチェックする技術に利用されています。
半導体チップを作る最終チェックで江戸時代から続く魔鏡の技術が必要不可欠、って何だかすごいですよね。

以上2つの事例は第1章「ハイテクによみがえる伝統の技」として紹介されています。

この本の中では、他にも第2章「快適な住まいと環境づくり」として、左官さんや宮大工さんの技術がいかに現代建築に活かされているか、というあたりを紹介しています。
ところでご存知の方も多いと思いますが、宮大工さんって釘を1本も使わずに神社など建物を建てるんですよね。それこそ自然にもやさしいですし、材木のリサイクルもしやすいでしょうね。昔の人の知恵と技術ってホントすごいなー、と思います。

他に、第3章「自然の力を引き出す知恵」として、醤油、納豆、酒づくりから現代のバイオテクノロジーに様々な応用がされていること、第4章「ゆたかな暮らしと健康のために」でわらじ やお灸、漢方医学の効用を紹介しています。

最後の第5章「新たなフロンティアをめざして」は、寿司や友禅染、着物のデザインといった正に伝日本の統といった印象のある技術がどのように形を変え、現代に息づいているのかを紹介しています。

ひとつの項目に対し、4ページ程度で構成されているので、どこからでも読めます。図解があり、専門用語もないので、とても読みやすいのではないかと思います。

形を変え、継承されてきた日本の伝統技術。
日常の、身の回りで今も活躍する職人や匠が培ってきた技の数々。
そして、温故知新、古きに学んで貪欲に過去の技術を取り込んで発展させた現代の匠たち。

色々なウンチクが得られるのももちろんですが、私たちの生活をより便利にしてくれる現代の匠たちの考え方、姿勢も学べる1冊です。

NHKの「プロジェクトX」やテレビ東京の「ガイアの夜明け」をご覧になっている方ならより楽しめるのではないでしょうか。

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