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2005 .04 .28

『日本のお金持ち研究』橘木 俊詔 / 森 剛志・著

『日本のお金持ち研究』と刺激的なタイトルの本。『日本の経済格差』『脱フリーター社会』といった著作で知られる経済学者、橘木俊詔(たちばなき・としあき)さんによる、現代日本のお金持ちの実像に迫る1冊です。

日本の金持ちが日常生活をどのように送っているか、特に余暇、社会活動、消費・貯蓄活動の実態に迫っています。その中で庶民とお金持ちの生活習慣と意識の差をまとめている点が興味深いですね。

日本のお金持ち研究
橘木 俊詔著 / 森 剛志著
日本経済新聞社 (2005.3)
通常2-3日以内に発送します。

経済学者の著作というとちょっとかしこまった感じを受けますが、230p程度の厚さで文章も平易で読みやすいと思います。所々統計・調査資料の裏づけを取った資料の表が織り込まれており、そこはさすが学者さんの著作、といった印象です。

「高額納税者番付」によると、日本には年間納税額3,000万以上、毎年推定1億円以上の年収を稼ぐ人が約9,000人いるそうです。

本書は、日本の「お金持ち」とはどんな実像なのかを探るため、一過的な年収増をした人を排除した上で、約6,000人の継続しているお金持ちに直接アンケート調査を行ってまとめたものです。そのアンケートの回答数は、著者らの当初予想の5%未満を上回り、約8%(約500通)に及んだそうです。お金持ちのみなさんは思った以上に好意的に自分のことを教えてくれるんですね。

今日、企業買収や株価のニュースが日々報道されるようになりましたが、お金持ちから想像するIT企業経営者、莫大な相続を得た人、スポーツ選手……こうしたお金持ちは全体の数パーセント以下に過ぎないそうです。
インタビューで一番回答が多いのは1代で財を成した企業経営者の人たちだったそうです。

また、高所得なイメージがある弁護士、会計士はそうでもなく、0.4%以下だそうです。それでも年収3,000万クラスだそうなので、ホントのお金持ちって桁が違いますね。。。

調査の結果、日本のお金持ちは2タイプに大別されます。それは「企業家」と「医師」。

企業家とはいえ、継続的に事業を粛々と続けてきた人が多いのが特徴であり、いわゆる一過的に富を得た「成金」はまだ高額納税者に軒を連ねない。
医師の高所得者は開業医であり、大病院で主流の内科・外科ではなく、眼科、美容外科など不妊治療など現代的な特定専門診療科目が多いのが特徴。

今回の調査では、90%以上が既婚者で、同一の配偶者と30年以上生活している、という特徴が浮き彫りになっています。結構ご年配な人物像が浮かび上がっていますね。
事実、調査対象の平均年齢は62歳、配偶者の平均年齢は58歳とのことです。

興味深いのが、日本のお金持ち2タイプの暮らしぶりをまとめた項。
企業家は、質素倹約を旨としている。車は高級国産車を所有している。
医師は、消費欲が旺盛で派手なレジャーを楽しんでいる。車は高級外車を好む。

お金持ちの人たちに共通している考え方が、もはや「名門大学に行き」「大企業で出世する」モデルは成功モデルとは言えない。学歴や企業ブランドよりも、個人に重点が移行してきている、という点。

そして、仕事を天職と捉え、富を蓄積し、社会に奉仕していく姿勢が見て取れること。
調査の中で、高所得者が親と同じ職業を選択する割合は大きい。しかし、「継ぐ」といった際に「事業を物理的に継ぐ」だけではなく、「生き方を継ぐ」という精神面のほうが重要な関心事、と書かれているのは、「ようは人の生き方の違い」が高い収入を得てきたか、そうでなかったかのポイントである、と説いています。

成功者と言われるこれらの人々が異口同音に経済的成功に重要な点として挙げているのが、
肉体的・精神的健康、自分の仕事を愛している、正直な人柄であると答えています。逆に不必要なものとして、一流大学に行くこと、器用さ、要領のよさ、優秀な頭脳を持つこと、と答えています。

「誠実で勤勉なことが大事」という点に帰結していると感じるのは、日本人的過ぎでしょうか。
調査対象となったお金持ちはかなり年齢が高いのですが、余暇にボランティアに身を投じたり、若い頃に増して仕事に打ち込むようになるそうです。

最近の傾向としては、徐々に伝統的に事業を行ってきた企業家や医師に、現代ならではの企業家がお金持ちの仲間入りを果たしてきているそうです。

健康食品、パチンコ店、消費者金融、インターネットやITサービス、飲食チェーンといった消費者へのサービス提供で成功する例が近年多い。それは比較的省コストで特段の専門技能がなく起業できることがポイントだそうです。いずれにしてもハイリスク&ハイリターンですね。
大きな企業にいても安定的な暮らしが保証される時代ではなくなってきているのは間違いないようです。

憧れのお金持ちも、豪遊に耽っているというわけでもない姿が本書を通して見えてきました。

さぁ、どう生きていきましょうか。
憧れと現実と、生き方と。そんなことを考えるのにおすすめしたい1冊です。

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