『コピー用紙の裏は使うな!』村井 哲之・著
メルマガ「コスト削減ニュース」発行者による著作。
本書自体は書き下ろしだと思うんだけど、前後いたるところで事例や解説が重複していて少し読みづらい。
たとえば98ページにさらりと出てきたPPS(電力販売の新規事業者)の説明が157ページでやっと解説されてるところとか。まあ、まず概略をさらっと流してから後段で詳細説明という流れ自体は好みだろうけど。
とはいえ、事例が豊富で具体的な対処法にまで解説が及んでいるので読みながらコストマネジメントへのイメージがどんどん膨らみます。
著者が述べてるように、コスト削減(コストカット)は後ろ向きな意味でのリストラではなく、企業戦略のひとつと位置づけられる「コストマネジメント」なんですよね。
コスト削減とは単なる「ケチケチ運動」ではなく(中略)「経営」と「現場」のすき間を継続して埋めていく作業知ってたつもりだけど分かってなかった、「コストマネジメント」についての考え方が学べるのが本書の最大の旨味です。
収益の入り口となるマーケティングや営業はROI(費用対効果)がハッキリ分からないことが多いけれど、コスト削減による利益創出は100%の成果を出すことができる。
すばらしい。どんなに見かけの売り上げがあったところで企業活動すべての原資は利益なくして生み出せませんからね。
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たとえ部門の1スタッフであっても利益創出に貢献することができる。そのアクションをもっと大勢で、全社的に取り組めればさらに大きな利益を生み出すことができる。
でもそのためには経営側とスタッフが一丸となって取り組む必要があると著者は主張します。
「評価なくして継続なし」ぶっちゃけその通りです。いくら会社の利益に貢献したところで個人の評価や報酬につながらなければやる気はおきません。さりとて個人のアクションだけではさしたる成果が挙げられないのも事実。
経営側のトップダウンによる指示だけでなく、経営の「見える化」を進めた上で「コストの見える化」も進める。スタッフにも分かりやすい指標と評価をあわせ持つこと、そして現場への権限委譲という英断をもってコストマネジメントはその効果を最大に発揮するんですね。
本書ではコストを、電気代や上下水道に代表されるエネルギーコスト、通信費やコピー代、家賃などのオフィスコスト、パート人件費や商品ロスで発生するオペレーションコストの3つに分類し、それぞれの削減手法として、調達改善、運用改善、設備改善の方法を具体例を交えて解説しています。
コストマネジメント、これは「改善」とも言い換えることができますが、「元祖カイゼン」トヨタ自動車が毎年前年比で2~3,000億円のコスト削減を継続して達成している事例が紹介されています。
世界のトヨタであっても継続してコストを削減してるわけです。事業規模の大小問わず取り組むべき問題なのは明白ですね。
ぼくは「ムダ」は嫌いですけど「ゆとり」は必要だと思っています。けどムダに手運用の業務に追われ、考えるゆとりがない日常を送ってるので本書の主張には激しく共感しました。
ムダとゆとりは違います。考えることは人間にしかできないことで、そのためには考えるゆとりが必要です。人間は機械じゃないですから。
本書のおかげで考えるためにムダを排して利益を生み出していこうと決意を新たにしましたね。
最後に、現場にコスト意識が浸透しない、コスト削減が進まない5つの理由を引用しておきます。ちなみに188ページです。
- 見えないものが下がるわけがない。
- 「当事者意識」がないものは守られない、達成されない。
- 課題のないところに改善なし。
- 評価のないところに継続なし。
- 方針のないところに定着なし。
詳細は本書を読んでいただく事として、この真逆がコストマネジメントを成功させるポイントになるわけですね。
720円の新書でいったいいくらのコストが削減できていくらの利益が生み出せるんでしょう。
すばらしくROIの高いコスト(!)ですね。
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