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2008 .11 .15

『できない人ほど、データに頼る』

最近はデータ分析なんての生業にしてるので思わずタイトルに釣られて買った本。

でも書名の『できない人ほど、データに頼る』は第1章の見出し語であって、原著名は『See,Feel,Think,Do』。直訳すると「見て、感じて、考えて、実行する」。このフレーズは本文中に頻発します。

データを妄信することの問題点を指摘する着眼点は間違ってないけど、原著がイギリスで出版されてることもあって海外の事例ベースなのでややイメージしづらいかな。日本人に馴染みのある事例が少ないので。
あと翻訳書にありがちな冗長な言い回しが多くて少しクドい。

本文を通して読むと分かるんだけど、『できない人ほど、データに頼る』は逆説的な比喩なので書名はちょっと煽り過ぎな気がする。

全体的な方向性がMBA(ビジネススクール)の定量的・計数化手法だけで事実を捉えようとする考え方に警鐘を鳴らしているので、いっそのことMBA的科学的評価方法の問題点と対比する構成のほうが分かりやすかったかも。

とはいえ、マーケットリサーチの限界点についての記述は、まさに自分がデータ分析だけで知りえないことをアンケートで補おうとしているところだったので陥りがちな盲点を指摘してくれていたのはありがたかったです。

顧客が何を知らないかを、企業の担当者本人が分かっていない
→顧客は何が嫌いかを伝えることはできます。しかし、どうすればよくなるかという改善点については滅多に口にしてくれないものなのです。
この本に顧客ニーズのすべてやその解決方法が書かれているわけではないし、必ずしも(少し古い事例も掲載されているなど)記述が適切でないと思える箇所もあるけど、「本当にこれでいいのか?」と考えるきっかけにはなります。案外と答えは自分の中にあるものだったりするので。まずは「考えて」みないとね。

以下、個人的に思うところがあってマーキングした箇所です。

できない人ほど、データに頼る
アンディ・ミリガン ショーン・スミス
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 173194

  • 調査の有効な活用方法は、ビジネスチャンスになると直感で感じたことを、数値化することです。間違っても、調査がビジネスチャンスをつくり出してくれると考えないでください。(50ページ)
  • ブランドにとっていちばん重要なことは、信頼性です。96%の人が信頼性を支持し、企業規模が大きいことを支持する人はわずか15%に過ぎません。(81ページ)
  • 広告キャンペーンとは、顧客をワナにかけるのではなく、顧客ニーズに応えるものなのです。(89ページ)
  • 「なぜ?」疑問は反論のためでなく、物ごとを深く理解するためのもの。理解できると、さらに改善できるから。(144ページ)

それと、128ページの「企業の成功のカギを握る12の要素」。これらに目新しい項目はないけど、簡潔に箇条列挙でまとまってるのは重宝します。

  1. 市場フォーカス
  2. ビジョン、ミッションそして戦略
  3. 企業文化
  4. 人事政策
  5. 企業風土
  6. 行動基準と手順
  7. サービス
  8. 品質
  9. 差別化
  10. 業績管理
  11. 業績維持
  12. リーダーシップ
注意しなきゃならないのは、手続き論にフォーカスし過ぎると官僚的になるし、属人的なリーダーシップにフォーカスし過ぎるとワンマン型経営になって歯止めが効かなくなる、という点がありますね。

35ページに記述されているジャック・ウェルチの言葉。

「従業員が経営陣に顔を向け、顧客にお尻を向けることを防ぐ唯一の手段とは、組織のリーダーが顧客との距離を、従業員と同じレベルにすることだ」
顧客視点の欠落は悲しい。でもデータだけを見ていると時としてただの数字として見てしまう落とし穴が口を開けていることがあります。

従業員が経営陣に愛されてるかどうかはうかがい知れないけど、個人の評価のための顔色伺いの仕事はしたくないもの。またそうしたデータも「作りたくない」もの。データはデータで事実ですからね。
自分がされたらヤなことをお客さんにしなければ定量的にも定性的にもよい評価が得られると思います。

調査の手法にばかり捉われるのではなく、ワンマンなリーダーの望むとおりのデータを作るのではなく、サービスやブランド、そして収益を向上していくための「事実」を掴めるように。そうして精進していくためのヒントとしてオススメですね。

できない人ほど、データに頼る
アンディ・ミリガン ショーン・スミス
ダイヤモンド社
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