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2007 .10 .14

『「売れ残った本」半額に』しても売れると思わない

「売れ残った本」半額に 出版社17社、ネットで本格販売(asahi.com)
再販契約で定価販売を義務づける出版業界で、「売れ残った本」をインターネット上で値引き販売しようという試みが、12日から本格的に始まる。
やっと書く気になった話題。はてブで盛り上がってますね。

これ、記事タイトルにあるように「売れ残り対策」が主眼になってしまってる。
小学館や集英社、講談社、文芸春秋などの大手出版社が、絶版の一歩手前の「在庫僅少(きんしょう)本」を提供し、半額で通年販売する。出版不況で書籍の4割が読者の手に届かず返品されるなか、価格を拘束しない「第2の市場」を創設して本の復活をはかるのが狙いだ。
呼びかけは昭和図書。小学館や集英社、祥伝社などいわゆる一ツ橋グループ(小学館から派生した出版社。基本的にイニシャルが「S」。)の在庫倉庫・物流を担う会社。

売れない商品を保有してても在庫(=資産)なので税金かかるし維持コストもかかる。倉庫が悲鳴を上げてるからどうにかしようって背景が見て取れる。でもそれって読者には関係ないよね。

根本的に出版社、取次ぎと書店の構造的な問題があると思う。
・事前リサーチで需要を読んだ上で出版される書籍などまずない
・大型店への配本偏重で全国に新刊が流通することはない
・「パターン配本」による不適切な販売チャネルへの商品供給
・取次ぎからの請求を相殺しようとする「金融返品」による返品数増加
・「返品できる」という甘えに根ざした本屋の目利きのない仕入れ
・書店の大型出店のによる商品供給のための市中滞留在庫
要は「出版市場の縮小」なんて言ってるけど、それって自分たちで生み出してない? って思う。
・出版部数は適正なのか?
・全国に広告しておいて全国に商品を供給してるのか?
・客注なのに減数ってなんだよ?
・注文品、相変わらずいつ入荷するかよく分からないよね?
・本屋に送品して見込める「売り上げ」をして出版社は予算を立ててるよね? それって実売分をどこまで考慮してる? 返品も織り込み済みの予算?
・本屋も「欲しい商品が入らなくて請求ばかりされるから」返品してるよね? お客さんに手に取ってもらって売る努力をどれだけしてる?
・大型店出店してとりあえず棚埋めなきゃってことで金額と数量だけで発注してない? しかもしばらく(1年以上)請求されないよね?
出版社に対してと本屋に対して両方に言いたいことがある。

「僅少」って「希少」じゃないんだよね。その意味でいうとホントに「売れ残り」。「希少本」や「絶版本」なら価値があるけど。初版本なんかは「希少」だと思う。だから欲しいひとも多い。

送品高(出版社の予算)のために生まれて本屋からすぐ返品されて倉庫に逆戻りする本ほどかわいそうなものはない。出版される本のぜんぶとは言わないけど相当多いと思うよ。

それでいて本屋が減ってるとはいえ17,000店はあるわけだから初版8,000部(これは多いほうの数)で全国に行き渡るわけがない。

面積のデカいメガストアや大手チェーンなら売れるでしょ、というエリア、ロケーション、マーケティングも何もない中で商品流通が行われている。

お客さんの目に触れて(本の情報を知って)、手に取って、興味を持って、買ってもらえる仕組み作りをしなきゃいけないです。自店のお客さんの属性を分析してる本屋さんがどれだけありますか?

メールやFAX、チラシに小冊子、読書イベント…。町の本屋さんはお客さんと接することができる機会がとてもあるじゃないですか。

なんか「本屋さん、がんばれ」みたいなことになってしまってまとまりが悪いんだけど。

売れてしかるべき本が売れてしかるべき数作られていなくて、売れてしかるべき場所に供給されきっていないことが「返品4割」「断裁処分増加」の原因だと思うわけです。

なので決して「価格の問題」ではない。むしろ「ひとの経験・知恵」をパッケージ化した本は安いと言ってもいい。売れない本は(売れるための機会が少なかったこともあるけど)安くしても売れない。

ブックハウス神保町.comの取り組みは出版社が自ら思考停止に陥ったとしか見えない。

▼関連リンク
ブックハウス神保町.com

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