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2009 .06 .26

「責任販売制」の対象はどうして企画モノばかり?

出版業界の流通革命?返品改善へ「責任販売制」広がる(asahi.com)
小学館、講談社、筑摩書房など大手・中堅の出版社10社が、新たな販売方法「責任販売制」に乗り出した。定価に占める書店の取り分を現行の22~23%から35%に上げる代わりに、返品する際の負担を書店に求める制度だ。出版不況の中、長年の懸案だった4割に及ぶ返品率を改善する狙いがある。
『ハリー・ポッター』みたいに卸値を下げて書店のマージンを増やすかわりに返品できない「買い切り」はこれまでもあったけど、「責任販売」ってのは返品自体はできるんですね。委託販売のハードルをちょっと上げた感じかな。

返品が多いのは出版社の資金繰りのための作り過ぎ(出版点数増加・供給過多)と、ほぼ形骸化してる返品期限に甘んじた書店側の安易な返品(もちろん、小売りのニーズを汲み取れていない取次ぎのパターン配本も大きな要因)がイタチゴッコになってることが主な原因。しかもこのスパイラルは出版社・書店双方にほとんど旨みがないので「責任販売制」なるものは一定の効果を挙げると思われます。

まあ「責任販売制」自体はけっこう前からあったんだけど、対象となる商品は記事にもある『ホームメディカ新版 家庭医学大事典』や『CDえほん まんが日本昔ばなし 全5巻セット』とか、いわゆる企画モノばかり。しかもこういう商品って販売数に応じて出版社から別途マージンが出たりするので書店店頭のみならず、外商なんかも必死に売るわけです。

本屋やってる時にチェーンの本部から一応各店ごとの販売目標を言い渡されたりしたんだけど、個人的には全然売る気がしなかったんですよね。だってお客さんのニーズとマッチしないんだもの。なのでそんな企画モノは売れるに任せて、自店の客層にマッチした商品の仕入れに注力してました。

委託販売(+定価販売)をベースにしたモノの流れと売り方は間違いなく制度疲労を起こしてるので「責任販売制」自体は進めていく価値があると思うんだけど、もっとフツーにニーズがある商品(1,500円クラスの単行本とか)で展開しないと書店側に過度な販売を強いるだけで、仕組みとしては機能しないんじゃないですかね。

別に企画モノじゃなくても仕掛けたり、需給・販売管理できると思うけどなぁ。

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