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2008 .09 .29

『小学館101新書』創刊

新書激戦 小学館参入が選別の火ダネに(FujiSankei Business i)
「バカの壁」「女性の品格」などメガヒットが続出した新書市場に10月、大手では最後となる小学館が参入する。
今月創刊した「マガジンハウス文庫」は形態が文庫版なだけで傾向は他社のそれとまったく異なるのでおいとくにしても、小学館文庫は1997年創刊とかなり後発だった。そして今さら感タップリでこんどは新書に進出。
10月1日創刊の「小学館101(イチマルイチ)新書」。レーベル名は「100の上を目指す」という意味を込め、創刊ラインアップに経済評論家の勝間和代さん、ビートたけしさんら人気著者を並べた。マーケティング局の原本茂さんは「一刻も早くヒットを飛ばし、認知度を高めたい」と意気込む。
「小学○年生」といった学年誌からはじまった小学館はやはり雑誌屋。今もって書籍は得手としていないという印象が強い。そして動きが遅い。まあ大手なんてのはどこもそうだろうけど。
原本さんは「カジュアルな商品も増え、手軽に読みやすくなった。書店に専門コーナーがあるため単行本より目につきやすく、売り上げにつながると判断した」と話す。
ズレてるなぁ。むしろ抑揚のないパッケージで陳列されるから1点1点は死蔵しやすいのに。

単行本の方が単価が高い分、相対的に販促費もかけられるしパッケージが大きい分、平積みしたときの視認・認知性が圧倒的に高いですよ。

読者における新書(や文庫といったペーパーバック群)のメリットは「低価格で買いやすい」ことに他ならない。でもそれは裏を返せば購入単価の下落につながるし、薄利多売に拍車をかける。

『バカの壁』以降、新書というレーベル群に注目が集まるようになったのはメリットと言えるけど、「単行本の文庫落ち」と違って新書は書き下ろしが多いのが常なので原稿料含め原価は高めなハズ。てことは数を売らなきゃ収益は厳しいわけだけど、資金繰り優先の出版点数のおかげで1点1点をじっくり販売できる機会は減ってきてる。
「売れない商品は新刊と入れ替えに、1カ月で返品する状態」(都内の書店)
読者は決してレーベルとしての新書を求めてるんじゃなくて、「いい本をより安く」欲してるだけ。なので自社レーベルで本屋の販売面積を占有したところで売れないものは売れない。

むしろ玉石混合の中、少数の「玉」を売るために(言い方悪いけど)「石」な内容のプロダクツを量産して毎月のレーベル点数の穴埋めをしても機会損失と不良在庫を生むだけ。

わざわざ刊行点数の縛りをかけてレーベル化するんじゃなくて、「新書サイズ」の単行本をワンショットで出していった方が、「本」が長持ちすると思うよ。いい本は長く読み継がれるもの。

ブックオフは形態によらず作家名順で陳列してるけど、あれはあれで正しいと思う。
本屋がレーベル群で陳列してるのって、出版社単位の在庫管理をし易くするっていう売り手側の都合でしかないから。読者は(岩波は除くにしても)出版社名なんて覚えてないし関係ないからね。いい本、売れてるという本が買えればいいだけ。

点数先にありきの出版で売れ行きが悪くなってレーベルごと消滅しました、なんていったら一番迷惑なのは読者なんだよね。レーベルが続いてこそ読者も根付くものだから。

なのでヒットを飛ばして認知度を高められたとしても、読み継がれるプロダクツが続かなければ、性急に売らんかなの姿勢しかなければ、そのレーベルは続かない。

出版業界、大丈夫かなぁ。大丈夫じゃないよなぁ。。。

▼参考リンク
小学館101新書(小学館)










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